遺言書の作成は、弁護士、司法書士、行政書士に依頼することができます。
では、どのような場合に弁護士に相談・依頼すべきでしょうか。
今回は、遺言書を作成する際に、弁護士に依頼するのが望ましいケース、弁護士に依頼した場合の報酬(費用)について、詳しく解説します。
目次
- 1 遺言書の作成を弁護士に依頼すべき理由とは?!
- 2 弁護士に依頼した際にかかる費用(報酬)の料金相場とは?!
- 3 弁護士以外の専門家に依頼した場合と比べて弁護士はどうか?
- 4 弁護士と一緒に遺言書作成する時の流れはどうなるの?!
- 5 遺言書作成時の注意点とは?!
- 6 そもそも遺言書ってどんなもの?!
- 6.1 なぜ遺言書が必要なのか?
- 6.2 実際に遺言書を作った方がよいパターンとは?!
- 6.3 遺言書には3種類の方式がある
- 6.4 公正証書遺言とは?無難に遺言を残したい場合はこれ
- 6.5 公正証書遺言であっても無効と判決された例は多数存在するので注意
- 6.6 自筆証書遺言とは?不備があったら無効になりかねない
- 6.7 自筆証書遺言を選択する場合は相当注意が必要?!
- 6.8 自筆証書遺言は偽造されるリスクがある
- 6.9 2020年7月から遺言書保管制度が新たに
- 6.10 秘密証書遺言とは?滅多に利用されない特殊な遺言
- 6.11 公正証書遺言と秘密証書遺言は別途公証役場で手数料がかかる
- 6.12 遺言書をもし見つけたら、家庭裁判所で検認が必要
- 6.13 遺言書が2つ以上ある場合、古い遺言書は無効になる
- 6.14 遺留分は遺言書があっても侵害することはできない
- 6.15 遺留分侵害額請求をすることで遺留分は受け取ることができる
- 7 まとめ
遺言書の作成を弁護士に依頼すべき理由とは?!
遺言書をご自身で作成することも可能です。
どのような場合に弁護士に相談をするべきか解説します。
法的トラブルへの対応に強い
弁護士は、紛争性のある事案を取り扱う唯一の専門家です。
弁護士は、業務として紛争性のある事案を取り扱っていますので、法的トラブルに対する対応をすることが可能です。
ですので、弁護士に依頼するのがお勧めです。
遺言内容の正確性を担保(遺言が無効にならない)
遺言者が自身で作成した場合、記載が不十分となって無効になることがあります。
例えば、預貯金について、銀行名、口座名、口座番号等の情報が抜けている場合です。
弁護士に依頼をすれば、遺言者の意向を確認して、記載に不備がない、無効にならない遺言書を作成することができます。
相続財産の正確な調査が可能
遺言書を作成するにあたり、特に遺留分を考慮して作成することが望ましいです。
この遺留分を算定するにあたり、相続財産の総額を確定しなければなりません。
そして、不動産がある場合、相続財産の評価が非常に重要になります。
弁護士に依頼すれば、相続財産を把握して、遺言者の意向に沿った遺言書を作成することができます。
どのような遺言書を書くべきか様々な観点からアドバイスがもらえる
遺言書は、遺言者の意向に沿って作成することになります。
もっとも、遺言書の作成にあたり、遺留分や相続税等を考慮することが非常に重要です。
弁護士に依頼をすれば、遺言による紛争が生じないような、遺言書の作成のアドバイスをすることができます。
弁護士に依頼した際にかかる費用(報酬)の料金相場とは?!
弁護士に相談・依頼した場合、どの程度費用(報酬)がかかるのか、解説します。
初回の相談は基本的に無料?!
弁護士の初回の法律相談料は、弁護士によって異なります。
初回の法律相談も30分5000円(税別)というのが多いようです。
もっとも、最近は、無料という事務所も増えています。
相続の相談料
相続の相談料についても、弁護士によって異なります。
相続については、初回相談料が無料という事務所もあります。
遺言書作成費用
遺言書を作成する際に弁護士に支払う報酬も、弁護士によって異なります。
遺産の総額や遺言する内容によって異なります。
弁護士に依頼をする際には、見積書を作成してもらうのが良いでしょう。
遺言書保管費用
自筆証書遺言を作成した場合、遺言書は、遺言者本人が保管するのが一般的です。
しかし、遺言者が保管していた場合、第三者が発見して書き換えられてしまう可能性があります。
ですので、弁護士によっては、遺言書を保管してもらうことができる場合があります。
保管の費用は、年間数千円~1万円程度が多いようです。
遺言執行者依頼費用
弁護士に遺言執行を依頼する場合、報酬が発生します。
この報酬も弁護士によって異なります。
そして、この報酬は、遺言者の財産の総額によって算定するのが多いようです。
この報酬の相場は、遺産の総額によって大きく異なります。
遺言の証人になる費用
公正証書遺言は、公証人が証人2名以上の立ち会いの下で作成するものになります。
証人については、日当を支払うことがあります。
この日当は、5000円~1万円程度が多いようです。
相続人調査・相続関係図作成費用
弁護士は、戸籍(除籍、原戸籍)謄本を収集して、相続人の調査及び相続関係説明図を作成することができます。
相続人の調査に係る費用は、相続手続(遺産整理)、遺産分割協議等の着手金・報酬金に含まれることが多いです。
遺産整理費用
弁護士は、相続人に代わって、被相続人の遺産である預貯金の解約、不動産の相続登記をすることができます。
この報酬は、財産の総額によって大きく異なります。
遺産分割協議の代理人費用
弁護士費用については、各弁護士によって様々ですが、着手金と報酬金という形の費用体系としている弁護士が多いようです。
着手金とは、弁護士に事件を依頼したときに支払うものです。
報酬金とは、事件が終了したときに支払うものです。
これらの費用は、相続人が取得した金額を経済的利益とし、この経済的利益を基準に算定されることが多いようです。
経済的利益 | 着手金 | 報酬金 |
300万円以下 | 8% | 16% |
300万円超
3000万円以下 |
5%+9万円 | 10%+18万円 |
3000万円超
3億円以下 |
3%+69万円 | 6%+138万円 |
3億円超 | 2%+369万円 | 4%+738万円 |
遺留分侵害額請求の費用
遺留分侵害額請求についても、遺産分割協議と同様に、着手金と報酬金という形の費用体系としている弁護士が多いようです。
相続放棄の費用
弁護士に相続放棄を依頼した場合、5万円~10万円が多いようです。
後見の費用
弁護士に後見の申立てを依頼した場合、15万円~20万円が多いようです。
財産管理の費用
弁護士に財産管理を依頼した場合、3万円~5万円が多いようです。
その他相続に関する弁護士費用
この他にも、検認手続、相続財産管理人、限定承認等の申立てがあります。
検認手続や相続財産管理人は、10万円~20万円が多いようです。
限定承認は、財産がプラスかマイナスか、相続人や債権者の人数等によって異なります。
ですので、弁護士に依頼をする際には、見積書をとるなどして確認をしましょう。
弁護士以外の専門家に依頼した場合と比べて弁護士はどうか?
弁護士以外の専門家に遺言書に関する依頼をした場合、どのようなメリット・デメリットがあるのか解説します。
司法書士に依頼するメリット、デメリットとは?
司法書士に依頼するメリットは、不動産の相続登記を踏まえて遺言書を作成することができることです。
相続人は、遺言者が死亡した後、不動産の相続登記をすることになります。
司法書士に依頼すれば、この相続登記もセットで引き受けてもらえることが多いです。
司法書士に依頼するデメリットは、紛争性のある事案や不動産以外の相続に関する知識が豊富ではないことです。
ですので、被相続人の遺留分、特別受益、寄与分等をした遺言書を作成したい場合には弁護士に依頼するのが良いでしょう。
行政書士に依頼するメリット、デメリットとは?
行政書士に依頼するメリットは、弁護士・司法書士と比べて、費用を抑えることができます。
行政書士に依頼するデメリットは、行政書士が紛争性のある事案や相続登記が関わる事案を取り扱っておらず、知識が豊富ではないことです。
ですので、被相続人の遺留分、特別受益、寄与分、相続登記が関わる遺言書を作成したい場合には弁護士に依頼するのが良いでしょう。
税理士に依頼するメリット、デメリットとは?
税理士に依頼するメリットは、相続税の節税のため、各種控除や特例等を踏まえた遺言書を作成することできることです。
税理士に依頼するデメリットは、税理士が遺産分割協議書を作成できないことです。
税理士は、遺産分割協議書を作成することはできないので、遺言者が作成するか、別の専門家に依頼しなければなりません。
また、相続税が発生しないのであれば、税理士に依頼するメリットは全くありません。
一番のリスクは不備があって遺言書が無効になること⇒弁護士が一番
遺言書の作成にあたり、もっとも怖いのは、不備があって無効になることです。
一部の不備でも、遺言書全体が無効になることがあります。
ですので、遺言書を作成する際には、専門家に依頼するのが良いでしょう。
専門家の中でも、法律全般に精通している弁護士に依頼するのがお勧めです。
そもそも専門家であるからといって相続に強いわけではない?
相続の相談は、弁護士にするのがお勧めです。
もっとも、弁護士だからといって全員が相続に詳しいわけではありません。
弁護士の中には、企業法務、交通事故、刑事事件等を専門にしている者もいます。
ですので、相続を取り扱っている弁護士に依頼するのが良いでしょう。
結局はコミュニケーションが円滑にとれるかどうかが重要
どの弁護士に依頼するかは、非常に重要です。
相続の相談をする際、相続を取り扱っている弁護士に依頼するべきです。
あとは、法律相談で話をしてみて、コミュニケーションをとることができる、話をすることができる弁護士に任せるのが良いでしょう。
弁護士と一緒に遺言書作成する時の流れはどうなるの?!
弁護士に遺言書の作成を依頼する場合、どのように進めるのか解説します。
弁護士事務所訪問 初回打ち合わせ
弁護士に遺言書の作成を依頼したら、まずは事務所で打ち合わせをします。
遺言書を作成するうえで、相続人及び財産の調査が重要になります。
ですので、遺言者から話を聞き、収集する資料を確認します。
相続関係説明図と財産目録を一緒に作成する
相続関係説明図を作成するのに必要な戸籍(除籍、原戸籍)謄本、財産資料を収集します。
遺言者が自分で収集することもできますが、弁護士が行うこともできます。
資料が集まったら、相続関係説明図及び財産目録を作成します。
遺言書の種類を決め、遺言書の内容を詰める
作成する遺言書は、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言のどれかを決めることになります。
どの遺言にするかを決めたら、遺言の内容を決めます。
弁護士は、遺言者の意向を聞いて、遺留分等考慮して、遺言者にあった遺言書の案を作成します。
遺言書を作成する
遺言内容が決まれば、遺言書を作成します。
自筆証書遺言であれば、紙とペンを用意します。そして、遺言者が自書します。
公正証書遺言であれば、公証人と日程調整をするとともに、公証人との間で遺言書の内容につき打ち合わせをします。
秘密証書遺言であれば、遺言者が遺言書を作成した後、弁護士が公証人と日程調整をすることになります。
弁護士に遺言書の作成を依頼する場合に必要となる書類とは?戸籍謄本や印鑑証明など
遺言書を作成する際に必要な書類は、遺言書ごとに異なります。
まず、次の資料は、どの遺言書を作成する場合でも必要になります。
相続人に関する資料(戸籍謄本類)
財産に関する資料(不動産の登記、預貯金の写し、固定資産評価書など)
自筆証書遺言及び秘密証書遺言を作成する際には、紙、ペン、封筒、印鑑があれば足ります。
公正証書遺言を作成する際には、被相続人の実印、印鑑登録証明書が必要になります。
また、相続人以外の者に財産を譲り渡す場合には、この者の住民票が必要になります。
遺言書作成時の注意点とは?!
遺言書を作成する際に注意するべき点について、解説します。
相続と遺贈の使い分けに注意する
遺言書の中で、「相続」と「遺贈」の使い方に注意する必要があります。
いずれも財産を譲り渡すという点では異なりません。
しかし、遺贈は、相続人だけではなく第三者にも行うことができます。
これに対し、相続は、相続人にしか行えません。
第三者に財産を「相続させる」ことはできません。
財産の特定のために、預貯金であれば口座番号まで不動産であれば地番や家屋番号が必須
預貯金を相続させる際には、銀行名、支店名、口座番号まで記載する必要があります。
遺言者は、同じ銀行の同じ視点に複数口座を持っていることもあります。
ですので、遺贈させる財産を特定するため、口座番号を記載して対象の預貯金を明確にしなければなりません。
遺言者が土地建物を遺贈する際、住所だけでは不十分です。
土地建物には、それぞれ登記されています。
ですので、土地建物を取得させる際には、土地であれば「所在」「地番」「地目」「地積」、建物であれば「所在」「家屋番号」「種類」「構造」「床面積」等の、登記に記載されている情報で、対象の土地建物を明確にしなければなりません。
全ての財産について相続者を指定する
遺言者の全ての財産につき、誰にどのように分けるのかを明確にします。
例えば、「●は長男及び長女に相続させる」というようなあいまいな記載は、遺言者の死後の紛争を引き起こすきっかけになりかねません。
借入金がある場合、負担者を指定する
借入金についても、誰に弁済させるのかを明らかにします。
借入金を支払ってもらう債権者との関係では、当然に遺言書のとおりになるわけではありませんが、相続税の負担、相続人間の求償等で重要になります。
遺言執行者を指定しておく
遺言書であらかじめ遺言執行者を指定しておきます。
そうすれば、預貯金の解約、相続登記等の手続を円滑に進めることができます。
その他にも、認知手続(民法781条2条)、後見人の指定(民法839条1項)、相続人の廃除に係る手続(893条)等の手続も進めてもらえます。
そもそも遺言書ってどんなもの?!
遺言書とは何か、なぜ作成する必要があるのか、3種類ある遺言書の注意点などについて、解説します。
なぜ遺言書が必要なのか?
例えば、あなたには相続人として妻、長男、長女がいます。
あなたの遺産は、現在も妻が居住している自宅の土地建物だけです。
あなたは、自宅の土地建物を妻に相続して欲しいと考えています。
このような場合、遺言書がなければ、遺産分割協議をすることになります。遺産分割協議の際、法定相続分で分けることが一般的ですので、自宅の土地建物を妻が2分の1,長男及び長女が4分の1ずつで相続することになります。
しかし、遺言書を作成すれば、妻に土地建物をすべて相続させることができます。
このように遺言書によって、法定相続分に限られず、遺言者の意思通りに財産を分けることができます。
実際に遺言書を作った方がよいパターンとは?!
遺言書を作成すべき代表的なパターンは、法定相続分によらずに財産を分けたい場合です。
例えば、あなたには相続人として妻、長男、長女がいます。
あなたの遺産は、現在も妻が居住している自宅の土地建物だけです。
あなたは、自宅の土地建物を妻に相続して欲しいと考えています。
まさにこの場合、遺言書を作成するべきです。
その他にも、遺言者が相続人以外の第三者に財産を分けたい場合、相続人がいない場合です。
遺言書を作成しなければ、財産を相続人以外の第三者に譲り渡すことができません。
遺言者が世話をしてくれた相続人以外の第三者に渡したいと思っている方いますが、このような場合、遺言者を作成するべきです。
相続人がいない場合で、債権者への支払い、特別縁故者に分与されてもなお財産が残れば国庫に帰属します。
ですので、遺言者が誰かに財産を譲り渡したい場合には、遺言書を作成するべきです。
遺言書には3種類の方式がある
遺言書には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言があります。
自筆証書遺言は、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押したものになります(民法968条1項)。
公正証書遺言は、遺言者が、公証人に遺言内容を口授して、公証人がこれを筆記して公正証書にしたものになります(民法969条)。
秘密証書遺言は、遺言者が、遺言書を作成して、これを封印し、この封印した遺言書を公証人1人及び証人2人以上に提出して、自己の遺言書であること並びにその筆者の氏名及び住所を申述するものになります(民法970条)。
公正証書遺言とは?無難に遺言を残したい場合はこれ
公正証書遺言は、遺言者が、公証人に遺言内容を口授して、公証人がこれを筆記して公正証書にしたものです(民法969条)。
この遺言は、遺言者が公証人に対し口授して作成されるものであり、公証人及び証人2名が遺言者の意思どおりであることを確認していますので、自筆証書遺言と比べて、無効になる可能性が低い確実なものです。
また、公正証書遺言は、原本が作成した公証役場で保管されます。
ですので、自筆証書遺言のように紛失したり、書き換えられるおそれはありません。
公正証書遺言であっても無効と判決された例は多数存在するので注意
公正証書遺言であっても、無効になることがあります。
この多くは、遺言者が認知症等により遺言能力がなかった場合です。
公証人及び証人は、遺言者から直接話を聞きます。
しかし、遺言者の健康状態を把握するわけではありません。
ですので、遺言書を作成した当時、すでに認知症であり、判断することができなかったという事があります。
自筆証書遺言とは?不備があったら無効になりかねない
遺言書は、遺言者の死亡後に効力が生じます。
効力発生時期には、遺言者がいないため、遺言書は、遺言者の真の意思に基づくことを担保しなければなりません。
そのため、遺言書は、法定の方式にしたがって作成することを求めています。
この法定の方式に従っていない場合、遺言書は無効になります。
自筆証書遺言を選択する場合は相当注意が必要?!
自筆証書遺言は、不備があれば無効になってしまいます。
また、自筆証書遺言に記載された内容が曖昧であれば、どの相続人がどのように財産を相続するのか分かりません。
遺言者は、自身の意思通りに相続人に財産を譲り渡したいのであれば、どの相続人に、どの相続財産を渡すのかが明らかになるように形で記載しなければなりません。
自筆証書遺言は偽造されるリスクがある
自筆証書遺言は、遺言者だけで作成し、遺言者自身で保管していることがあります。
遺言者以外の者が遺言書を見つけた場合、遺言書の内容を改ざんすることができてしまいます。
2020年7月から遺言書保管制度が新たに
自筆証書遺言は、紛失、改ざん、相続人が気づかないことも遺産分割をしてしまう危険性があります。
そこで、2020年7月より、法務局での自筆証書遺言の保管制度が創設されました。
この手続きを使用すれば、裁判所の検認手続が不要になります。
秘密証書遺言とは?滅多に利用されない特殊な遺言
秘密証書遺言は、遺言者が、遺言書を作成して、これを封印し、この封印した遺言書を公証人1人及び証人2人以上に提出して、自己の遺言書であること並びに筆者の氏名及び住所を申述するものです(民法970条)。
もっとも、遺言書は、自筆証書遺言又は公正証書遺言が広く利用されています。
自筆証書遺言は、費用がほとんどかからずに作成できるため、費用をかけたくない人が利用しています。
公正証書遺言は、費用はかかりますが、公証人が作成するため、方式を誤るおそれがなく、遺言書が無効になることが少ないため、遺言書の内容を確実に実現したい人に利用されています。
秘密証書遺言は、公証人の関与を経て作成されます。
公正証書遺言よりも費用を抑えることができますが、遺言書が無効になるリスクがあります。
自筆証書遺言と比べ、改ざんされるリスクは減りますが、費用がかかります。また、公証人及び証人の前で申述しなければならないため、手間がかかります。
多くの方は、簡単に作成できる自筆証書遺言か、厳格な手続になるが無効になるリスクを減少させる公正証書遺言が利用されており、どちらかを利用しています。
ですので、中間的な位置づけである秘密証書遺言は、あまり利用されません。
公正証書遺言と秘密証書遺言は別途公証役場で手数料がかかる
公正証書遺言は、公証人が作成するものになります。
ですので、その手数料が、手数料令という政令で定めています。
目的の価額 | 手数料 |
100万円以下 | 5000円 |
100万円を超え200万円以下 | 7000円 |
200万円を超え500万円以下 | 1万1000円 |
500万円を超え1000万円以下 | 1万7000円 |
1000万円を超え3000万円以下 | 2万3000円 |
3000万円を超え5000万円以下 | 2万9000円 |
5000万円を超え1億円以下 | 4万3000円 |
1億円を超え3億円以下 | 4万3000円に超過額5000万円までごとに1万3000円を加算した額 |
3億円を超え10億円以下 | 9万5000円に超過額5000万円までごとに1万1000円を加算した額 |
10億円を超える場合 | 24万9000円に超過額5000万円までごとに8000円を加算した額 |
これを前提に、全体の財産が1億円以下のときは、上記金額によって算出された手数料額に、1万1000円が加算します。
また、遺言は、相続人・受遺者ごとに別個の法律行為になります。そのため、相続人や受遺者ごとに、相続させ又は遺贈する財産の価額により目的価額を算出して、それぞれの手数料を算定し、その合計額がその証書の手数料の額となります。
なお、遺言者が公証人のところに来ることができない場合、公証人の出張費用、証人の日当が発生するか等により作成費用は異なります。
秘密証書遺言は、公証人が、遺言者が提出した証書に提出日及び遺言者の申述を封紙に記載するものです(民法970条1項4号)。
この手数料として1万1000円がかかります。
遺言書をもし見つけたら、家庭裁判所で検認が必要
公正証書遺言以外の遺言書の保管者は、原則として、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければなりません(民法1004条1項,2項)。
遺言書が2つ以上ある場合、古い遺言書は無効になる
遺言書は、複数作成されていることがあります。
このような場合、作成日付が新しいものが有効になります。
そして、作成日付が古い遺言書は、新しい遺言書と抵触する限りで、無効になります。
遺留分は遺言書があっても侵害することはできない
遺留分を有する相続人は、配偶者、子(子の代襲相続人を含む。)、直系尊属に限られます。
兄弟姉妹には遺留分は認められていません。
この遺留分は、相続人の一定割合の財産の相続権を保障するものです。
ですので、遺言者が特定の相続人(=受遺者)にすべての財産を相続させようとしても、遺留分だけは受遺者以外の相続人も取得することができます。
遺留分侵害額請求をすることで遺留分は受け取ることができる
遺留分を侵害された相続人は、遺留分侵害額請求をすることができます(民法1046条)。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
遺言書を作成したいときには、弁護士に相談するのが一番無難です。ただし、遺言書の内容や相続したい財産の種類などによっては弁護士以外に依頼することも可能です。
しっかりと自身が作りたい遺言書をイメージして、誰に相談すべきなのかを精査してみるとよいでしょう。