遺言を作成するのなら、公正証書遺言にすべきという話も聞きます。
本当に、公正証書遺言を作成した方が良いのでしょうか。
また、公正証書遺言とは、どのように作成できるのでしょうか。
今回は、公正証書遺言の作成方法や書き方について、詳しく説明していきます。
目次
- 1 公正証書遺言ってそもそも何?!
- 1.1 被相続人と相続人って誰のことをいう?!
- 1.2 そもそも遺言って何?!
- 1.3 遺言がなければどのような相続が発生する?!
- 1.4 遺言の必要性がある場合ってどんなとき?
- 1.5 遺言はいつするべきなのか?!
- 1.6 遺言書の種類は自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類
- 1.7 公正証書遺言ってどんな遺言書?!
- 1.8 遺言書の中で一番の多く利用されているのが公正証書遺言(年間10万件以上作られている)
- 1.9 公正証書遺言においては、遺言者以外に公証人と証人が必要
- 1.10 自筆証書遺言ってどんな遺言書?公正証書遺言との違いとは?!
- 1.11 秘密証書遺言ってどんな遺言書?公正証書遺言との違いとは?!
- 2 公正証書遺言を利用するメリットやデメリットとは?!
- 3 公正証書遺言の作成の流れとは?!
- 4 公正証書遺言作成や手続きにかかる費用と必要書類
- 5 公正証書遺言の閲覧、検索、書き換えは誰がどういう方法でできるの?!
- 6 遺言書に書くことで得られる効力とは?!
- 7 遺留分は遺言よりも優先されるため注意
- 8 その他公正証書遺言や遺言について知っておくべきこととは?!
- 8.1 遺言の訂正や取消はいつでもできる?!
- 8.2 特定の条件をつけて財産を遺贈することもできる
- 8.3 遺言に記載した相続人や受遺者が遺言者より先に死んだらどうなる?!
- 8.4 遺言書が存在するかどうかは公証役場にて確認できる
- 8.5 証人にできる人の要件とは?!
- 8.6 公証人が不在の状態でつくられた遺言書は無効になる可能性がある?!
- 8.7 証人になれない人が立ち会った遺言書は無効になる?!
- 8.8 公証人が口授していない場合は無効になる可能性がある?!
- 8.9 証人が席を外している間に作られた遺言書は無効になる?!
- 8.10 遺言者に遺言能力がない場合は無効?!
- 8.11 記載漏れにより、相続登記できるものが一部だけとなってしまうケースもあるので安心は禁物
- 8.12 公証役場以外でも、病院、施設、自宅などに公証人を派遣して遺言の手続きが可能!
- 8.13 遺言能力があるうちに作成しておくのがポイント
- 8.14 効力のない事項であっても付言事項として記載することができる
- 8.15 遺言書作成と合わせて任意後見契約を結ぶことを検討すべき?!
- 9 そもそも公正証書ってどういうもの?!
- 10 公正証書遺言や相続に関して悩んだら専門家に相談すべき
- 11 まとめ
公正証書遺言ってそもそも何?!
公正証書遺言は、公証人法に基づいて法務大臣が任命する公務員である公証人が作成するものです。
公正証書遺言は、専門家である公証人が、民法の要件・方式に基づいて作成します(民法969条1号~5号)。
被相続人と相続人って誰のことをいう?!
公正証書遺言の説明の前に、重要な被相続人と相続人というのは誰のことを指すのかを説明していきます。
被相続人は、亡くなった人のことをいいます。
相続人は、被相続人の死亡により、被相続人の遺産を承継する者のことをいいます。
そもそも遺言って何?!
遺言とは、遺言者の死後に効力が発生する、遺言者の生前の意思表示を記載したものです。
遺言は、遺言者の死後の法律関係を定めるものになります。
遺言がなければどのような相続が発生する?!
遺言がなければ、被相続人の財産を法定相続分にしたがって分けることになります。法定相続分とは、各相続人の取り分を法律上定めたものです。
遺言の必要性がある場合ってどんなとき?
遺言は、遺言者が、法定相続分によらずに、自身の考えた通りに財産を相続人に譲り渡したいときに作成します。
また、遺言者に法定相続人がいない場合や、相続人ではない者に財産を譲り渡したいときにも、作成します。
遺言はいつするべきなのか?!
遺言は、遺言者の死後の法律関係を定めるものになります。
遺言者が亡くなる前に作成しなければなりません。
また、遺言書作成当時に、認知症等により遺言能力がない場合、遺言者が作成した遺言書は無効になります。
ですので、遺言者に遺言能力があるうちに、できる限り早く作成しておくのが望ましいでしょう。
遺言書の種類は自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類
自筆証書遺言は、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押したものになります(民法968条1項)。
公正証書遺言は、遺言者が、公証人に遺言内容を口授して、公証人がこれを筆記して公正証書にしたものになります(民法969条)。
秘密証書遺言は、遺言者が、遺言書を作成して、これを封印し、この封印した遺言書を公証人1人及び証人2人以上に提出して、自己の遺言書であること並びに筆者の氏名及び住所を申述するものになります(民法970条)。
公正証書遺言ってどんな遺言書?!
公正証書遺言は、公証人法に基づいて法務大臣が任命する公務員である公証人が作成するものです。
公正証書遺言は、専門家である公証人が、民法の要件・方式に基づいて作成します(民法969条1号~5号)。
遺言書の中で一番の多く利用されているのが公正証書遺言(年間10万件以上作られている)
公正証書遺言は、専門家である公証人が、民法の要件・方式に基づいて作成します(民法969条1号~5号)。
専門家が民法の要件・方式に沿って作成すること,公証人が遺言者の意思を確認していることから、遺言が無効になるおそれが少ないため、広く利用されています。
公正証書遺言においては、遺言者以外に公証人と証人が必要
公正証書遺言は、公証人が証人2名以上の立ち会いの下で作成するものになります。
ですので、公正証書遺言を作成するには、公証人及び証人が必要になります。
自筆証書遺言ってどんな遺言書?公正証書遺言との違いとは?!
自筆証書遺言は、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押したものになります(民法968条1項)。
ですので、遺言書を作成するのは、遺言者です。
公正証書遺言は、遺言者が、公証人に遺言内容を口授して、公証人がこれを筆記して公正証書にしたものです(民法969条)。
ですので、遺言書を作成するのは、公証人です。
このように遺言書の作成者が異なります。
秘密証書遺言ってどんな遺言書?公正証書遺言との違いとは?!
秘密証書遺言は、遺言者が、遺言書を作成して、これを封印し、この封印した遺言書を公証人1人及び証人2人以上に提出して、自己の遺言書であること並びに遺言者の氏名及び住所を申述するものになります(民法970条)。
秘密証書遺言も、自筆証書遺言と同様に、遺言書を作成するのは遺言者になります。
秘密証書遺言も遺言者を作成するのは遺言者になりますので、この点が公正証書遺言と異なります。
公正証書遺言を利用するメリットやデメリットとは?!
公正証書遺言を作成するにあたり、どのようなメリットとデメリットがあるのかを解説します。
メリット①公証人関与のもとで作成する方法なため、無効になる可能性が低い確実な遺言書
遺言が無効になる場合として、遺言者が認知症等により遺言能力がなかった場合があります。
そして、遺言が見つかった場合に、遺言者が遺言作成時に遺言能力があったのかが争われることがあります。
公正証書遺言は、遺言者が公証人に対し口授して作成されるものであり、公証人及び証人2名が遺言者の意思どおりであることを確認していますので、自筆証書遺言と比べて、無効になる可能性が低い確実なものです。
メリット②原本が公証役場に保管されているため紛失や書き換えの危険がない
自筆証書遺言は、遺言者が自宅に保管していた場合、紛失したり、遺言書を見つけた者が書き換えたりされるおそれがあります。
しかし、公正証書遺言は、原本が作成した公証役場で保管されます。
ですので、自筆証書遺言のように紛失したり、書き換えられるおそれはありません。
メリット③検認手続きが不要なため、すぐに遺産を分けることができる
自筆証書遺言は、原則として検認手続をしなければなりません。
検認手続は、遺言書の保管者又は発見者が遺言書を家庭裁判所に提出して行われるものです。
この手続は、遺言書の変造・隠匿を防止するため、遺言書を確認して、その原状を保全するものである。
メリット④字が書けない、口がきけない、耳が聞こえない人でも遺言できる
自筆証書遺言は、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書しなければなりません。
ですので、字が書けない人は自筆証書遺言を作成することができません。
しかし、公正証書遺言は、遺言者が公証人に遺言内容を直接口頭で伝える方法で行いますので、字が書けない人も公正証書遺言を作成することができます。
口がきけないため口授できない人でも、公証人及び証人の前で通訳人の通訳により申述するか、自書することにより、公正証書遺言を作成することができます(民法969条の2)。
デメリット①公証人や証人に自身の財産を公表する必要がある
公正証書遺言は、公証人及び証人の立ち会いの下で作成します。
ですので、遺言者は、公証人及び証人に自身の財産を明らかにすることになります。
財産を知られたくない遺言者は、公正証書遺言ではなく、自筆証書遺言によることになります。
デメリット②公証人や証人に手数料、報酬を支払う必要がある
公正証書遺言を作成する際には、公証人に手数料を支払わなければなりません。
また、公証役場から証人の紹介を受けた場合には、証人にも手数料を支払わなければなりません。
自筆証書遺言であれば、公証人や証人に支払う手数料はかかりません。
ですので、費用を抑えたいという遺言者は、自筆証書遺言によることになります。
デメリット③財産内容の調査、書類収集などに手間がかかる
公正証書遺言は、作成するまでに戸籍謄本等の書類を準備しなければなりませんし、財産内容を明らかにする場合もあります。
デメリット④公証人との打ち合わせに手間がかかる
自筆証書遺言は、遺言者が自分で作成するので、打ち合わせ等はありません。
しかし、公正証書遺言は、公証人が作成しますので、公証人は、遺言者がどのような財産を持っているのか、どのように分けたいのか、その他にも遺言で決めたいことがあるかを確認して遺言書案を作成します。
公証人が遺言書案を作成した後、案どおりの遺書書で良いのか打ち合わせをしなければなりません。
このように、遺言者は、遺言書を作成するために、公証人と打ち合わせをしなければなりません。
公正証書遺言の作成の流れとは?!
公正証書遺言はどのように作成するのか、一連の流れを解説します。
公正証書遺言の見本とは?!(見本を示す)
令和●年第●号
本職は、遺言者 ● の嘱託により、後記証人の立会をもって、次のとおり遺言者の遺言の趣旨の口述を筆記してこの証書を作成する。
第1条 遺言者は、遺言者の有する下記不動産を●(●年●月●日生)に相続させる。
記
(1)土地
所在 ●
地番 ●
地目 ●
地積 ●㎡
(2)建物
所在 ●
家屋番号 ●
種類 ●
構造 ●
床面積 ●
2 遺言者は、下記の銀行預金を●(●年●月●日生)に相続させる。
記
(1)●銀行●支店 口座番号●
(2)●銀行●支店 口座番号●
本旨外要件
住所 ●
職業 ●
遺言者 ●
(●年●月●日生)
上記は印鑑登録証明書の提出により人違いでないことを確認させた。
住所 ●
職業 ●
証人 ●
(●年●月●日生)
住所 ●
職業 ●
証人 ●
(●年●月●日生)
証人は、いずれも民法第974条所定の欠格事由に該当しないことを確認した。
上記遺言者及び証人に読み聞かせたところ各自この筆記の正確な事を承認し、遺言者及び証人は各自次に署名押印する。
遺言者 ● ㊞
証人 ● ㊞
証人 ● ㊞
この証書は、民法969条第1号ないし第4号所定の方式に従って作成し、同条第5号に基づき本職次に署名押印する。
令和●年●月●日 下記本職役場においいて
- 法務局所属
公証人● ㊞
ステップ①戸籍謄本や住民票などの必要書類を集める
遺言者の戸籍謄本、相続人と遺言者との関係がわかる戸籍、また、相続人以外のものに財産を譲り渡す場合には、その者の住民票が必要になります。
ステップ②証人を決める
公正証書遺言を作成する場合、証人2人の立ち会いが必要になります。
証人は、次の者はなることができません(民法974条)。
・未成年者
・推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族
・公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人
これらにあたらない者に証人を依頼することになります。
なお、公証役場に依頼すれば、証人の紹介を受けることができます。
ステップ③遺言書案の調整を公証役場とする(2週間~1か月程度)
公証人は、遺言者の意向を確認した後、遺言書案を作成します。
公証人は、遺言書案を作成した後、遺言者に沿ったものかを確認し、遺言者の意向にしたがって、作成する遺言書を完成させます。
ステップ④調整が完了したら、証人2人以上が立ち会い、公証人から本人確認と質問を受ける
遺言書案が完成した後、公正証書遺言を作成します。
公正証書遺言を作成する際は、証人2人以上が立ち会ったうえで、公証人が遺言者本人であることを確認します。
ステップ⑤遺言者が遺言の趣旨などを公証人が口頭で伝える
遺言者は、公証人に対し、どのように財産を分けるのか話します。
財産の分け方以外にも、認知、未成年後見人の指定、遺言執行者の指定、付記事項なども話をします。
ステップ⑥公証人が遺言者の口述を筆記し、これを遺言者と証人に読み聞かせる
公証人は、遺言者の意向を確認したら、これを書面に記載します。
完成したものを遺言者に読み聞かせます。
ステップ⑦遺言者と証人が、筆記が正確であることを証人し、それぞれ署名押印する
遺言者は、自身の意向のとおり遺言書が完成されたかを、証人は、遺言者の述べたとおりに遺言書が完成しているかを確認します。
遺言書の内容に問題がなければ、遺言書及び証人は、公証人が作成した書面に署名・押印をします。
ステップ⑧公証人が民法969条の方法に従い真正に作成された旨を付記し、署名押印する
公証人は、「この証書は、民法第969条第1号ないし第4号所定の方式に従って作成し、同条第5号に基づき本職次に署名押印する」旨を記載します。
そして、公証人が署名・押印をします。
公正証書遺言作成や手続きにかかる費用と必要書類
遺言者が公正証書遺言を作成するにあたり、どのくらいの費用がかかるか、どのような資料を収集しなければならないのか解説します。
作成費用は法律で決まっている?!公証人の手数料とは?!
公正証書遺言の手数料は、次のとおり、手数料令という政令で定めています。
これを前提に、
目的の価額 | 手数料 |
100万円以下 | 5000円 |
100万円を超え200万円以下 | 7000円 |
200万円を超え500万円以下 | 1万1000円 |
500万円を超え1000万円以下 | 1万7000円 |
1000万円を超え3000万円以下 | 2万3000円 |
3000万円を超え5000万円以下 | 2万9000円 |
5000万円を超え1億円以下 | 4万3000円 |
1億円を超え3億円以下 | 4万3000円に超過額5000万円までごとに1万3000円を加算した額 |
3億円を超え10億円以下 | 9万5000円に超過額5000万円までごとに1万1000円を加算した額 |
10億円を超える場合 | 24万9000円に超過額5000万円までごとに8000円を加算した額 |
全体の財産が1億円以下のときは、上記金額によって算出された手数料額に、1万1000円が加算します。
また、遺言者が公証人のところに来ることができない場合、公証人の出張費用、証人の日当が発生するか等により作成費用は異なります。
公正証書遺言に必要な書類とは?!
公正証書遺言を作成する際には、次の資料が必要になります。
- 遺言者の戸籍謄本
- 遺言者の印鑑登録証明書
- 相続人と遺言者の関係が分かる戸籍(除籍、原戸籍)謄本
- 財産を譲り受ける者が相続人以外の場合、その者の住民票
- 遺言者の財産に関する資料(通帳のコピー,不動産の全部事項証明書・固定資産評価証明書等)
公正証書遺言の閲覧、検索、書き換えは誰がどういう方法でできるの?!
公正証書遺言の閲覧・検索はどのように行うのか、遺言者が公正証書遺言を書き換える、内容を変更するにはどのようにすればよいのか解説します。
遺言者の生前は遺言者本人のみが公正証書遺言を閲覧、検索できる
遺言者の生前に作成した公正証書遺言を閲覧・検索できるのは、遺言者のみです。
推定相続人や受遺者が閲覧・検索できるとすれば、遺言者に対し自己に有利な内容に書き換えを強要するおそれがあるため、これを防止するためです。
遺言者の死後は法定相続人、受遺者、遺言執行者などが公正証書遺言を閲覧、検索できる
遺言者が死亡した後に公正証書遺言を確認できるのは、法定相続人、受遺者、遺言執行者など、遺言者の相続に係る利害関係者のみになります。
遺言者の相続が開始するため、その利害関係者に閲覧、検索を認めています。
公正証書遺言を閲覧、検索する方法とは?!
遺言書を閲覧・検索するには、次の資料が必要になります。
・遺言者の死亡の記載がある戸籍(除籍)謄本
・閲覧・検索する者が相続人であることを示す戸籍(除籍、原戸籍)謄本
・閲覧・検索する者の本人確認書類
・閲覧・検索する者の印鑑(運転免許証があれば認印で足ります。)
公正証書遺言を書き換えたい場合はどうする?!
公正証書遺言を書き換える場合、改めて公正証書遺言を作成しなければなりません。
自筆証書遺言のように、加除や変更することはできません。
遺言書に書くことで得られる効力とは?!
遺言書でなしうる行為は限られています。遺言でなしうるものについて解説します。
子の認知
婚姻していない女性との間のできた子について,遺言で認知することができます(民法781条2項)。
後見人の指定
被相続人が未成年の子を残していた場合、後見人を指定することができます(民法839条1項)
遺贈(相続人以外の受遺者への遺贈も含む)
被相続人は、遺言書を作成することにより、法定相続分ではなく、遺言者の意思通りに相続をさせることができます。
被相続人は、遺言書により、法定相続人以外の第三者にも財産的利益を与えることができます。
寄付
被相続人は、遺言により、第三者にも財産的利益を与えることができます。
被相続人が団体に寄付を希望する場合、遺言による実現することができます。
相続財産の処分
遺言者は、自身の財産を相続人に与えたり、団体に寄付したり、自由に処分することができます。
相続の廃除、廃除の取消
相続の廃除とは、被相続人が、相続欠格事由ほど重大な非行ではないが、自己の財産を相続させるのが妥当ではないと思われるような非行や被相続人に対する虐待・侮辱がある場合に、その相続人の相続資格を剥奪する制度である。
被相続人は、遺言により、廃除を申し立てることができます。
また、反対に、たとえ廃除が確定しても、被相続人は家庭裁判所に廃除の取り消しを求めることができます(民法894条1項)
相続分の指定、指定の委託
被相続人は、相続分を指定することもできます(民法902条)。
例えば、配偶者に4分の3,長男に4分の1と決めることができます。
また、被相続人は、相続分の指定を第三者に委託することもできます。
遺産分割の禁止(一定期間)
遺言者は、相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁止することができます(民法908条)
遺産分割方法の指定、指定の委託
被相続人は、相続人の誰にどの財産を相続させるかを指定することができます(民法908条)。
例えば、配偶者に自宅の土地建物を相続させると決めることができます。
また、被相続人は、遺産分割の方法を第三者に委託することもできます。
遺言執行者の指定、指定の委託
遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する者です。
遺言者は、遺言において、遺言執行者を指定することができます。
また、遺言者は、遺言において、遺言執行者の指定を、第三者に委託することもできます。
相続人相互の担保責任
各共同相続人は、他の共同相続人に対して、売主と同じく、その相続分に応じて担保の責任を負います(民法911条)。
これは、共同相続人間で遺産分割をした際に、不適合のある財産を取得した相続人とそうでない相続人との公平を図るための規定です。
例えば、あなたの相続人として、長男及び長女の2人で、両名で遺産分割した結果、長男が不動産(1000万円),長女が預貯金(1000万円)を相続することにしました。
しかし、長男の取得した不動産の一部が第三者のものであり、取得した不動産が500万円の価値しかありませんでした。
このような場合、500万円を長男及び長女で負担します。今回は、長女が長男に対し250万円を支払います。
特別受益の持ち戻し計算免除
遺言では、特別受益の持ち戻し計算を免除の意思表示をすることもできます。
遺言者が、長男に対し、300万円を贈与しました。
遺言者は、長男に対し、相続とは別にこの300万円を余分に渡したいと考えていました。
このような場合、原則として、300万円を加えたものを相続財産とみなして、相続分を計算した後、長男は、すでに取得した300万円を控除して、具体的な相続分を算定します。
しかし、遺言者が、遺言で300万円の持ち戻し計算を免除する旨意思表示した場合、300万円を加えません。
生命保険金の受取人変更
遺言者は、生前に契約した生命保険の受取人を変更することができます。
遺留分侵害額請求(遺留分減殺請求)があった場合の、減殺方法の指定
改正前の民法では、遺留分減殺請求により、「贈与又は遺贈は遺留分を侵害する限度において失効し、受遺者又は受贈者が取得した権利は右の限度で当然に遺留分権利者に帰属する」としていました(最判昭和57年3月4日民集36巻3号241頁)。
そのため、遺言者は、遺留分減殺の方法として、「1有価証券、2預貯金、3不動産」の順に減殺するなどと指定することができました。
もっとも、改正により、遺留分権利者は、遺留分侵害額請求権の効果として金銭債権が発生するものとしていますので、減殺方法の指定は必要なくなったと考えられます。
祭祀承継者の指定(年忌法要等の主催やお墓の管理など)
遺言者は、遺言で祭祀承継者を指定することができます。
祭祀承継者は、墓地・仏具・位牌等に関する権利を取得します。
また、遺言者の年忌法要等を主宰することができます。
遺留分は遺言よりも優先されるため注意
相続人の中には遺留分を有する者がいます。
遺留分は、一定の範囲の相続人に対して、一定割合の財産の相続権を保障する制度です。
これは遺言者の意思によっても奪うことができないものです。
ですので、遺留分を侵害された場合には、遺留分侵害額請求をすることができます。
遺留分が認められる人とは?
遺留分を有する相続人は、配偶者、子(子の代襲相続人を含む。)、直系尊属に限られます。
兄弟姉妹には遺留分は認められていません。
遺留分の割合って具体的にどう計算するの?!
遺留分の基本的な割合は、相続人によって異なります。
相続人が、直系尊属のみである場合があります。
被相続人が亡くなり、親のみが相続人の場合です。
この場合には、被相続人の財産の3分の1が遺留分となります。
それ以外の場合には、被相続人の財産の2分の1が遺留分となります。
遺留分侵害額請求の時効や除斥期間は?!
遺留分侵害額請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から、1年以内に行使する必要がある。この1年が時効までの期間です。
相続開始の時から10年を経過するまでに行使する必要があります。
この10年が除斥期間といいます。
公正証書遺言によって遺留分侵害額請求する財産を指定するとトラブルになりにくい
改正前の民法では、遺留分減殺請求により、「贈与又は遺贈は遺留分を侵害する限度において失効し、受遺者又は受贈者が取得した権利は右の限度で当然に遺留分権利者に帰属する」としていました(最判昭和57年3月4日民集36巻3号241頁)。
そのため、遺言者は、遺留減殺の方法として、「1有価証券、2預貯金、3不動産」の順に減殺するなどと指定することがで、トラブルを防止することができました。
もっとも、改正により、遺留分権利者は、遺留分侵害額請求権の効果として金銭債権が発生するものとしていますので、減殺方法の指定は必要なくなったと考えられます。
生前に遺留分放棄をしてもらう方法もある?!
遺留分権利者は、相続開始前に、家庭裁判所の許可を受け、遺留分を放棄することができます(民法1049条1項)。
遺留分の放棄は、遺言者の死亡後の紛争を防止するために利用されます。
例えば、婚外子がいる場合に、婚外子に対して事前に財産を贈与しておくかわりに、婚外子には遺留分放棄をしてもらいます。
また、親を介護するために、親と同居する子がいる場合に、親と同居する子以外の子が遺留分を放棄することもあります。
その他公正証書遺言や遺言について知っておくべきこととは?!
これまで公正証書遺言について解説をしました。
もっとも、公正証書遺言にはさまざまな注意点等がありますので、これについて解説します。
遺言の訂正や取消はいつでもできる?!
自筆証書遺言は、遺言者自身で作成することができるため、訂正や取り消しも容易にできます。
公正証書遺言は、公証役場で作成しています。
ですので、すでに作成済みの公正証書遺言につき、訂正や取り消しをすることができません。
作成済みの公正証書遺言を訂正・取り消す場合には、新たに公正証書遺言を作成することになります。
特定の条件をつけて財産を遺贈することもできる
遺言者は、受遺者に対し、一定の条件を付けて、特定遺贈又は包括遺贈をすることができます。これを負担付遺贈といいます。
例えば、「配偶者の面倒を見る代わりに、500万円を贈与する」というものです。
遺言に記載した相続人や受遺者が遺言者より先に死んだらどうなる?!
遺言者の死亡以前に受遺者が死亡していた場合、遺贈は無効になります(民法994条2項)。
相続における代襲相続とは異なり、受遺者の相続人が代襲相続により承継することはありません。
遺言書が存在するかどうかは公証役場にて確認できる
遺言者の生前は、遺言書の有無すら回答してもらえません。
他方、遺言者が死亡すれば、遺言者の相続が開始するため、その利害関係者に閲覧、検索することができます。
証人にできる人の要件とは?!
公正証書遺言を作成する場合、証人2人の立ち会いが必要になります。
証人は、次の者はなることができません(民法974条)。
・未成年者
・推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族
・公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人
ですので、これらの者にあたらなければ、証人になることができます。
公証人が不在の状態でつくられた遺言書は無効になる可能性がある?!
公正証書遺言は、遺言者が遺言の趣旨を公証人に口頭で伝え、公証人がこれを筆記する方法で作成されます。
また、公証人は、作成した遺言書を遺言者及び証人2名に読み聞かせるか、閲覧させます。
このように公正証書遺言は、公証人が関与して作成されるものですので、公証人不在で作成された遺言書は無効になります。
証人になれない人が立ち会った遺言書は無効になる?!
証人になれない者が立ち会った結果、民法が規定する証人2人以上という要件を満たさないので、遺言書は無効となります。
なお、証人になれない者が同席していた場合でも、当該人物を除いて、民法所定の2人以上の要件を満たすのであれば、遺言は有効です(最判平成13年4月27日家月53巻10号98頁)。
もっとも、証人になれない者が参加したことで、遺言者の遺言内容に何らかの影響を与えた場合、遺言者の真意に基づいて作成できたとはいえないので、無効と解される可能性はあります。
公証人が口授していない場合は無効になる可能性がある?!
公証人は、遺言者が口授したものを筆記して、これを遺言者及び証人に読み聞かせなければなりません。
ですので、口授がなければ、民法所定の方式にしたがっていないことから無効になります。
証人が席を外している間に作られた遺言書は無効になる?!
公正証書遺言は、証人2人以上の立ち会いの下で、公証人が作成するものです。
証人2人は、遺言者の遺言の趣旨を聞き、その趣旨が筆記されていることを承認したうえで、署名・押印します。
このように証人2人は、公正証書遺言の有効性を担保するものですので、証人が籍を外している間に作成された遺書書は無効になる可能性があります。
遺言者に遺言能力がない場合は無効?!
遺言書は、遺言者の意思通りに財産を分けることができます。
しかし、遺言書作成時に、遺言者に遺言能力がない場合、その意思を尊重する必要はありません。
ですので、遺言書を作成する際に認知症等により遺言能力がない場合、遺言者が作成した遺言書は無効になります(民法3条の2)。
記載漏れにより、相続登記できるものが一部だけとなってしまうケースもあるので安心は禁物
遺言書がある場合、遺言書に記載された内容を実現させることができます。
ですので、遺言書に記載された土地建物については、相続登記を進めることができます。
しかし、記載されていない財産は、相続登記をすることができません。
したがって、相続登記が一部の土地建物しかできないことになります。
もっとも、遺言書の他の記載次第では、相続登記で着る可能性もあります。
記載漏れの遺言があれば、専門家に確認してもらうのが良いでしょう。
公証役場以外でも、病院、施設、自宅などに公証人を派遣して遺言の手続きが可能!
公正証書遺言は、公証役場で作成されます。
しかし、遺言者が高齢で公証役場まで外出するのが困難になることがあります。
このような場合、公証人に遺言者のいる病院、施設、自宅などに出張してもらい、公正証書遺言を作成してもらうことができます。
遺言能力があるうちに作成しておくのがポイント
遺言書は、遺言者の意思通りに財産を分けることができます。
しかし、遺言書を作成する際に認知症等により遺言能力がない場合、遺言者が作成した遺言書は無効になります(民法3条の2)。
遺言能力がなければ、遺言書は作成できませんので、遺言能力があるうちに作成するのが良いでしょう。
効力のない事項であっても付言事項として記載することができる
遺言書で相続の割合を法定相続分から変更した場合、遺留分減殺請求をしないよう求めた場合などには、付言事項にその理由を書いたり、家族への言葉を書いたりするのが効果的です。
付言事項は、法的拘束力を有するものではありません。
しかし、遺言書を作成した理由や家族へのメッセージを残すことで、相続人の理解を得られる可能性もあります。
遺言書作成と合わせて任意後見契約を結ぶことを検討すべき?!
遺言書を作成すると同時に任意後見契約をすることもあります。
人の中には、認知症になるなどして正常に判断することができなくなる方もいます。
任意後見契約は、このような状況になる前に、ご自身で任意後見人を指定し、万が一の場合、任意後見人に金銭管理等の権限を付与することができます。
任意後見契約は、法律により公正証書で定めることになっていますので、遺言書を作成する際に併せて作成するのも良いでしょう。
そもそも公正証書ってどういうもの?!
公証証書遺言について説明をしてきましたが、そもそも公正証書、公証人、公証役場とは何かを解説します。
公正証書とは?
公正証書とは、公証人法に基づき、法務大臣に任命された公証人が作成する公文書です。
公正証書は、事前に一定の事項を公証人に証明させることによって、私人間の紛争を防止することを目的とするものです。
公正証書遺言も、遺言者が遺言事項を定めることで、相続人間の紛争を防止することができます。
公証人とは?
公証人法に基づいて法務大臣が任命する公務員です。
公証人は、法務大臣が、判事や検事などを長く務めた法律実務の経験豊かな者から任命されることが多いです。
公証役場とは?
公証役場は、法務省が管轄する役所で、公正証書を作成する公証人がいるところです。
公証役場は、全都道府県にあります。
名古屋市内には3つの公証役場があります。
公正証書遺言や相続に関して悩んだら専門家に相談すべき
公正証書遺言や相続に関して悩んだことがあれば、専門家に相談をしましょう。
専門家は、現在の状況を聴取して適切な助言をしてくれます。
相続に関する争い(トラブル)や相続の全般的なことは弁護士に相談すべき
相続人間で争いがある場合や相続に関し分からないことがあれば、弁護士に相談をしましょう。
弁護士は法の専門家であり、法律全般につき相談を受けることができます。
特に、紛争性のある事案では、弁護士以外の専門家では対応することができませんので、弁護士に相談しましょう。
遺言書などの書類関係に限定して相談するなら行政書士に相談するのも手
法律の専門家である弁護士に遺言書を作成するサポートをしてもらうことができます。
しかし、弁護士に依頼すると、他の専門家と比べて費用が高くなる傾向にあります。
行政書士であれば、弁護士や司法書士と比べて、費用が安くなります。
ですので、簡単な書類の作成等を行政書士に依頼すれば、遺言書の作成や相続手続を進めてもらえます。
専門家を遺言執行者にすることも有効
遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する者です。
遺言執行者は、相続人に代わって、遺言者の財産に係る解約等の手続を進めることができます。
その他にも、認知手続(民法781条2条)、後見人の指定(民法839条1項)、相続人の廃除に係る手続(893条)等も行います。
このように専門性の高いこともありますので、遺言の内容次第では、専門家を遺言執行者にするのも良いでしょう。
専門家に相談するメリットとは?!
弁護士に公証証書遺言の作成を依頼した場合、公証人との調整をすべて弁護士が行います。また、必要資料についても、弁護士が協力して収集することができます。
ですので、遺言者が1人で行うよりも負担が大きく減ります。
また、遺言書を作成するにあたっては、遺留分にも配慮するのが望ましいです。
弁護士に依頼すれば、遺言者の意向を踏まえ、遺留分を考慮した遺言書を作成することが可能になります。
専門家に依頼した際の費用とは?!
遺言書の作成を専門家に依頼した場合の費用は、専門家ごとに異なります。
また、どのような遺言書を作成するのかにもよります。
弁護士に依頼をすれば、10万円程度かかります。
もっとも、これはあくまで一般的な金額ですので、まずは弁護士等の専門家に相談をしましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
公正証書遺言を作る際にはどのようにして作ればいいかをしっかりと理解してから作成しましょう。