フリーランスの方など、個人事業主の中には自宅で仕事をしているなんてことも多いのではないでしょうか。
実は自宅の家賃のうち、事業で使っている比率分は経費として計上することができ、これを家事按分といいます。
今回は、自宅の家賃を経費に計上する方法を徹底解説します。
自宅の家賃を経費に計上することで、経費を増やせるため、大きな節税につながることでしょう。
目次
青色申告での確定申告は必須
まずは、自宅の家賃のうち事業で使っている比率分を経費として計上したい場合には、原則として、青色申告を選択する必要があることを覚えておきましょう。
確定申告には青色申告と白色申告がありますが、白色申告の場合は、家事按分による事業の比率が50%以上でなければ経費とすることができません。
家賃以外も含めて家事按分できる費用は多岐にわたります。
家事按分を使いこなすためにも青色申告の届出を必ず出しておきましょう。
自宅兼事務所の家賃の家事按分計算のやり方は、面積割がおすすめ
実は、家事按分の計算方法は、具体的に決められているわけではありません。
したがって、按分比率は自由に決めてよいのです。
しかし、だからといって、経費を多く計上するために適当な比率を使ってしまえば、税務署に指摘されてしまいます。
そこで、一般的に使われている方法を踏襲して使うのが無難とされています。
自宅兼事務所の家賃の按分割合は、事業に利用している面積の割合を利用する人がほとんどですので、おすすめです。
例えば、3つ部屋があるマンションを賃貸していて、1つの部屋を書斎がわりにしていて、そこは基本的に仕事でしか使っていなかったとしましょう。
一方で、残り2つの部屋はプライベート用に使っている部屋だったとしましょう。
この場合、全面積のうち、書斎がわりにつかっている部屋の面戦の割合を利用することになります。
ちなみに、同居している家族が持ち主である自宅に住んでおり、その家族に家賃を払っているような場合には、一切経費にすることはできませんので、注意してください。
また敷金や保証金は、将来返還される予定のものであるため、家事按分の対象とすることはできませんが、仲介手数料は家事按分の対象にし、経費とすることができます。
一方で、礼金は支払ったままで返還される予定はありませんので、原則、家事按分の対象として経費に計上することができます。
ただし、20万円以上の場合には、賃借期間もしくは5年のうち短い方の期間で按分して計上しなければならないこととなっていますので注意しましょう。
事務所を別に賃貸している場合は、自宅の家賃は経費にできない??仕訳とともに解説
事務所を別に借りている場合でも、自宅に帰って引き続き仕事をしている個人事業主の方も多いのではないでしょうか。
実は、このように、事務所はあるけど、自宅でも仕事をしているという場合にも、家事按分して家賃の一部を経費にすることができます。
例えば、基本的には毎日仕事をしていて、月曜から金曜日は事務所で9時から17時まで仕事をし、家に帰ってからも平均4時間は仕事をしているとしましょう。
ただし、土日はほとんど仕事をしていないとします。
自宅の家賃は月20万円。
部屋は3つあり、書斎兼寝室が全面積の20%を占めているとします。
残りの部屋は一つは完全にプライベート用の趣味部屋で全体の30%を占めており、もう一つは共用スペースで全体の50%を占めているとしましょう。
さて、この場合、自宅の家賃20万円のうち、いくらを経費とすることができるでしょうか?
まずは、一日の24時間のうち、平日の4時間は仕事を利用しているわけですから、1週間単位でみると、自宅で仕事をしている時間の割合は、
時間の割合
(4時間×5日)÷(24時間×7日)=約12%
となります。
次に、自宅のうち事業に必要な面積を算出します。
面積の割合
書斎兼寝室が全面積の20%
共用スペースの50%を除いた面積に占める書斎兼寝室の面積の割合は
20%÷(100%-50%)=40%
また、共用スペースも業務上必要な部分も、この40%であると考えることができます。
自宅の家賃月20万円のうち、自宅で仕事をしている時間、その自宅のうち仕事で必要な面積の掛け合わせで家事按分をしてみましょう。
時間と面積の割合
20万円×約12%×40%=約1万円
結論として、月20万円の自宅家賃のうち、月1万円を経費として計上することができると考えられます。
これを仕訳にしてみると以下になります。
ポイント
地代家賃 1万円 / 現金預金 20万円
事業主貸 19万円
事業主貸とは、事業に関係ない支出を計上するときに利用する勘定科目です。
法人では出てきませんが、個人事業主の方はよく使う勘定科目になるため覚えておきましょう。
自宅が賃貸ではなく、持ち家の場合は何を経費にできる?
自宅が持ち家の場合は、下記のものを家事按分により経費にすることができます。
経費にできるもの
- 建物部分の減価償却費
- 固定資産税
- 住宅ローンの金利部分
なお、建物部分の減価償却費とは、建物の購入代金を法定耐用年数とよばれる資産の寿命のようなもので按分し、月々、一定額を費用として計上しているものになります。
また、マンションの場合には、管理費や共益費も経費にすることができます。
不動産を購入した際の購入代金を丸々、家事按分して経費にすることはできませんし、住宅ローンの元本部分の返済も家事按分の対象にはなりませんので注意してください。
これらはあくまで資産の購入もしくは負債の返済にあたり、費用としての性質のものではないからです。
ちなみに、住宅ローン控除を受けるためには、床面積の2分の1以上が自己の居住用である必要があります。また、事業用割合が10%以下であれば、居住用割合を100%とすることができます。
したがって、この住宅ローン控除の制度を利用する場合は、家事按分で10%を事業用の割合とすることが、一番の節税になる可能性があります。
水道光熱費やその他の生活費も家事按分は様々なところで利用できる!
家賃以外にも以下のような費用を家事按分により経費にすることができます。
家賃以外の経費にできるもの
- 自宅で仕事をしている場合の水道光熱費やインターネット通信費
- プライベート用と事業用の両方で利用している携帯電話の通信費
- プライベートと事業両方で利用している車の駐車場代、車検代、ガソリン代、ETC代、固定資産税
なお、電気代は、使用時間の割合のほかに、コンセントの事業利用の割合などを利用するケースもあります。
家賃の計上タイミングは?計算方法を途中で変更してもいいの?
家賃を経費にするときには、1か月に1回家事按分をし、計上する方法と、年に1回まとめて家賃を計上してしまう方法の2種類が一般的です。
毎月、事業での利用割合がほとんどかわらないような場合には、年に1回まとめて家賃を計上してしまう方が簡単です。
一方で、月によって利用割合が大きく変動する場合には、多少面倒ですが、毎月家事按分を行い、計上する方法の方が無難です。
なお、家賃の計上方法を適宜、使い分けることはできず、原則として、一度決めたらそのルールを変更することはできません。
頻繁にルールを変更して費用を多額に計上していれば税務署に指摘される可能性がありますので、ご注意ください。
家事按分の割合がわからなかったらどうする? 金額の目安は5割程度?
例えば、自宅の色々な箇所を仕事で利用しており、仕事部屋の面積などを利用して簡単に家事按分ができない場合にはどうすればよいのでしょうか?
そんな場合にも、仕事時間の記録をとるなど、様々な方法を吟味し、一定の理屈のつく家事按分方法を決定しなければなりません。
ただ、比較的家事按分の計算根拠が曖昧だと、税務署が入ったら不安だと思うかもしれませんが、目安として、5割程度までは問題ないと考えられているようですので、参考にしてください。
ちなみに家事按分の計算についてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてご参考ください。
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家事按分を利用した場合に、保管しておくべき書類は何?
確定申告の際に、家事按分の算出根拠資料の提出は求められていませんが、根拠資料の保管は義務付けられています。
したがって、家事按分の際に、面積割合を利用した場合には、「自宅兼事務所の間取り図」などを、作業時間の割合を利用した場合には、「作業時間の記録、履歴」などは必ず保管しておくようにしましょう。
まとめ
自宅の家賃を経費にすることは、個人事業主の経費を利用した節税の第一歩です。家事按分をしっかりと理解して、自宅の家賃だけでなく、経費を漏れなく計上し、節税に役立てましょう。