個人事業主になったばかりの人にとって、経費に落とすということに戸惑いや苦労することもあるでしょう。
今回は旅費交通費を経費に落とす方法を大公開します。
また仕訳や税金の取り扱いなどについても徹底解説します。
旅費交通費を経費に落としやすくするポイントは、ずばり、以下の3点です。
旅費交通費のポイント
- 領収書をもらえるものはすべてもらう
- 支払はクレジットカードやICカードを積極的に利用する
- クレジットカード明細やIC明細と連動させることができる会計ソフト(freee、マネーフォワード等)を使う
目次
- 1 旅費交通費を経費で落とす方法とは
- 1.1 業務で利用する旅費や交通費はすべて旅費交通費。費用にできるかどうかのポイントは、金額と業務利用の証明!
- 1.2 バスや電車などは領収書がもえらない
- 1.3 suicaなどのicカードのチャージでは経費に落とすことができない
- 1.4 タクシーの運賃は目安料金は証明できるが、領収書をとっておく方が無難
- 1.5 飛行機や新幹線やホテル代は実費精算が基本
- 1.6 ガソリン代も旅費交通費の範囲に入る。自家用車を業務で利用している場合は家事按分を利用する
- 1.7 領収書がない場合は、クレジットカードの明細やICカードの明細を利用できる
- 1.8 「出金伝票を作れ」というのは時代遅れなので気にしなくてよい
- 1.9 明らかに旅行目的の旅費交通費を経費にすることはできないので注意
- 2 旅費交通費を経費で落とすときの仕訳は?
- 3 法人の場合は、日当や通勤手当を利用する節税術が存在する
- 4 旅費交通費以外で、意外と盲点となる個人事業主が経費に落とせない項目とは?
- 5 まとめ
旅費交通費を経費で落とす方法とは
個人事業主は、事業をすすめて売上を増やさなければいけません。
そのためには、取引先や仕事先等へ出かけることが頻繁にありますし、遠方へ出向くこともあります。
そこで支払った旅費や交通費は、旅費交通費として経費にできます。
ここでは、経費として落とす際に知っておくべきことや注意点について説明します。
業務で利用する旅費や交通費はすべて旅費交通費。費用にできるかどうかのポイントは、金額と業務利用の証明!
個人事業主が事業として利用する下記の旅費や交通費は、全て旅費交通費になります。
経費で落とせる旅費交通費 | 新幹線を含む電車賃 |
バス代 | |
タクシー代 | |
高速道路通行料 | |
飛行機代 | |
有料パーキングなどの駐車場代 | |
レンタカーの料金 | |
燃料代 | |
ホテル宿泊代 |
ここで、重要なのが金額と業務利用の証明です。
領収書は、日時・支払先の会社名・金額が記載されていること、自身以外が発行していることから、証明力が一番高いものです。
貰える場合は、忘れずに貰いましょう。
また業務利用を証明するために、領収書の空白などに、利用した目的・事業との関係・利用区間など不足している情報があれば、メモしておくと良いでしょう。
また、領収書と同じくらいに高い証明力を発揮するのが、ICカードやクレジットカードの明細です。
積極的に利用するようにしましょう。
バスや電車などは領収書がもえらない
経費を落とすにあたっては、まず領収書をもらっておくことが基本になります。
しかし、バスや電車を利用した際には領収書はもらえません。
バスや電車の代金は固定されていて証明は簡単にできるため、領収書がなくても経費に落とせます。
ただし、事業として利用したことを証明するために、下記の内容をどこかにメモしておく必要がありますので注意してください。
ちなみに、suicaなどの交通系ICの利用明細を使えば、移動の目的や相手先の社名や氏名さえメモしておけば、それ以外の支出した年月日、交通手段、利用区間などは確認できるため非常に楽です。
また交通費の計上漏れを防ぐこともできます。
積極的に利用することをおすすめします。
経費として証明するための必要項目
- 支出した年月日
- 交通手段
- 支出した金額
- 相手先の社名や氏名
- 移動の目的
- 利用区間
suicaなどのicカードのチャージでは経費に落とすことができない
Suicaなどの電車やバスでも利用できるICカードのチャージをしただけでは、領収書があっても経費に落とせません。
ICカードは、交通機関以外のコンビニやスーバーなどでも利用できるため、事業と無関係な支出まで、経費に含まれてしまうからです。
タクシーの運賃は目安料金は証明できるが、領収書をとっておく方が無難
タクシーの運賃自体は、距離や時間から目安になる金額は証明できますが、領収書がなければ基本的に経費に落とすことはできません。
しかし領収書をもらい忘れたときなどたまにであれば、出金伝票や会計ソフト上の仕訳へのメモなどをした上で、経費にしてしまうこともできます。
ちなみに、領収書を貰っていない場合、電車やバスで移動したにもかかわらず、タクシー代として経費で落とそうとしているという疑いをかけられる可能性があります。
電車でいけるところを毎日のようにタクシーを利用していることにして経費として落としていて、かつ領収書を全くもらっていないとなると、経費に認められないケースもありますので注意してください。
ちなみに、タクシー代も最近はSuicaなどのICカードで支払えることが増えてきました。
ICカードの明細で支払日や金額を証明できるようにしておくと、領収書がなくても経費に落とせるようになるため便利です。
ただし、ICカードを利用した場合でも、下記のような項目はメモしておく必要がありますので注意してください。
ICカード利用時のメモ
- 相手先の社名や氏名
- 移動の目的
- 利用区間
飛行機や新幹線やホテル代は実費精算が基本
飛行機・新幹線・ホテル代も、タクシー代と同様に、基本的には、領収書をもらわないと経費にすることはできません。
飛行機では、航空会社によって料金が異なりますし、エコノミー・ビジネス・ファーストクラスでも料金に差がでます。
そして新幹線でグリーン車を利用すると金額に差がでます。
さらに、ホテル代でも宿泊会社や泊まる部屋によって料金が異なります。
そのため、かかった費用を明確に証明するために領収書が必要となります。
これらの費用の支払いはクレジットカードを積極的に利用することがおすすめです。
領収書がなくても、支払日と金額が把握できているため、利用目的や利用区間などをメモすることで、経費にすることができるからです。
また、旅費交通費の計上漏れも防ぐことができます。
ガソリン代も旅費交通費の範囲に入る。自家用車を業務で利用している場合は家事按分を利用する
事業目的の移動で車を利用した場合、そのガソリン代も旅費交通費として経費にすることができます。
当然、自家用車を事業で利用する場合、事業にかかった部分のガソリン代は旅費交通費にできます。
この場合、1回の使用で消費した燃料を金額に換算するといった厳密な計算をすることもできますが、かなり面倒な作業になりますので、普通は家事按分という方法を使って、事業用の費用とプライベート用の費用を按分します。
ガソリン代の家事按分において、按分比率の算出方法はこんなやり方があります。
例えば車両の利用記録を簡単にとっておき、その利用時間に比率で按分する方法や、平日は業務用で利用するが、土日はプライベートで利用するため、日数で按分する方法などがあります。
~ガソリン代を経費に落とす場合の具体例~
1年間のガソリン代が10万円だったとして、事業で利用した日数が120日とします。
この場合、次のような計算になります。
ガソリン代の按分例
120/365 ≒ 33% ⇒ 10万円 x 33% ≒ 33,000円
家事按分を使って、この33,000円を事業用のガソリン代として経費に落とします。
ちなみに車関連の経費の落とし方は、こちらの記事でも詳しく解説しています。
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領収書がない場合は、クレジットカードの明細やICカードの明細を利用できる
事業に必要な費用をクレジットカードやICカードで支払った場合、領収書がなくてもカード会社やICカードの利用明細を利用すれば、証明ができます。
クレジットカードでは、カード会社もペーパーレス化が進んでいるため設定を変更しない限り、明細は郵送されずネットで確認するようになっています。
これらの項目を1つ1つチェックしながら帳簿を作成するのは、大変な手間がかかります。
一方で、会計ソフトはクレジットカード会社と連動しているので利用状況が直ぐに把握できて、正確な入力が可能になります。
なので、
ポイント
- 旅費交通費はクレジットカードやICカードで支払う
- クレジットカード明細やIC明細と連動させることができる会計ソフト(freee、マネーフォワード等)を使う
が鉄則です。
「出金伝票を作れ」というのは時代遅れなので気にしなくてよい
出金伝票は、必要ありません。
出金伝票とは、まだ会計ソフトなどが存在しなかった時代に、紙による帳簿付けを行っていた時に、現金で経費を支払った時に記帳するために存在したメモ帳のようなものです。
その出金伝票を使えば、漏れなく出金の事実を証明するための項目をメモすることができるため、出金の管理をしっかりしているよというアピールが税務署にできるという目的から、出金伝票を使いましょうという記事をよく見かけます。
何度も言いますが、出金伝票のような時代遅れなものを使う必要はありません。
領収書がない場合、支払日や金額や事業で利用している事などを証明すればそれで十分です。
例えば、仕訳の備考欄に「〇月〇日 新幹線 東京⇒大阪 往復 〇円 〇〇の打ち合わせのため、〇〇社〇〇氏と面談」と記入しておけば問題ありません。
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明らかに旅行目的の旅費交通費を経費にすることはできないので注意
個人事業主の経費は、事業に関係する費用しか認められていません。
例えば、熱海へ取引先と旅行にいった場合には、人間関係を良好にして事業を円満にすすめるために必要な行為ですので、接待交際費として経費で落とせます。
しかし、本当に事業と関係があるのかを証明する必要はあります。
それが出来なければ、単なる旅行になるため経費では落とせません。
家族と行く旅行は原則経費にできませんので注意しましょう。
旅費交通費を経費で落とすときの仕訳は?
旅費、交通費を経費で落とす際の勘定科目は「旅費交通費」です。
ここでは、旅費交通費に関する仕訳や消費税について説明します。
旅費交通費の相手勘定科目は通常現金預金だが、事業主借になるときも
原則として、事業に関連した経費は事業用のお金で支払います。
例えば、〇〇社と打ち合わせをするため、JRで荻窪から新宿まで乗車する為に事業用の現金から切符を購入した場合は、現金が減っていますので以下のような仕訳をきる必要があります。
仕訳例
旅費交通費 / 現金
もし、事業用の現金を持ち合わせていなくてプライベートの財布から払った場合は、以下のようにします。
仕訳例2
旅費交通費 / 事業主借
「事業主借」は、個人事業主でしか使わない勘定科目です。
この科目は、プライベートのお金を事業の経費に使った場合や、プライベートのお金を事業用のお金に移した場合にも使います。
Suicaへのチャージ、実際にSuicaを利用したときの会計処理は?
IC カードの仕訳には2つのケースがありますので、それぞれについて説明します。
プライベートの IC カードにプライベートのお金をチャージした場合には、事業とは無関係のため経費として帳簿に付ける必要ありません。
もし、このプライベート IC カードから事業用の交通費を支払った場合には、以下のようにします。
仕訳例
旅費交通費 / 事業主借
次に、事業用の IC カードに事業用のお金をチャージした時には以下のような仕訳をきる必要があります。
仕訳例2
前払金 / 現金
チャージしただけでは、まだ経費とならないため一旦「前払金」で処理します。
次に、IC カードから、電車賃を支払った場合には次のようにして経費で落とします。
仕訳例3
旅費交通費 / 前払金
もし、この事業用 IC カードから個人用の買い物をした場合には「事業主貸」を使います。
仕訳例4
事業主貸 / 前払金
「事業主貸」も、個人事業主でしか使わない勘定科目です。
この科目は、事業用の資金をプライベートの為に支払った場合に使います。
海外への交通費は注意!消費税の課税非課税の区分はどうなる?
個人事業主でも年間の売上が1,000万円を超えた場合、翌々年度に消費税を納めなければいけません。
そのため、日々の会計で消費税を意識しておく必要があります。
会計ソフトをつかっている人であれば、会計ソフトで課税区分を選択するところがあり、そこの区分を選べば、自動的に消費税の計算や集計などをしてくれますので、とりあえず何を選べばいいかだけを意識しておけば問題ないでしょう。
実は、消費税は国内と国外の旅費で異なります。
原則的に日本国内の旅費は全て消費税込みの金額です。
しかし、海外になると状況が異なりますので表でまとめます。
国内旅費交通費 | 海外渡航費用 | 海外滞在費用 |
課税 | 免税 | 不課税 |
・国内の移動やホテル代
・国内での空港使用料 |
・海外への往復運賃
・燃油サーチャージ |
・海外でのホテル代
・海外の空港使用料 ・ビザ代 |
海外への渡航費用の免税は、船や飛行機でも同じです。
航空会社によっては、燃料サーチャージを請求しないところもあります。
ビザ取得費用については、ビザ代そのものは不課税です。
しかし、旅行代理店に申請代行の手数料を支払う場合には、課税となります。
消費税のしくみなどについて詳しく確認したい場合は、以下の国税庁のHPなどを確認するようにしましょう。
確定申告を見据えるならfreeeやマネーフォワードを利用するのが早い
クラウド会計ソフトの freee やマネーフォワードは、銀行やクレジットカード会社などの金融機関・交通マネー系 IC カードのオンラインサービスと連携できます。
移動が多い人は、これらの会計ソフトを利用すれば簡単に仕訳がきれます。
ただし、一部のタクシーではクレジットカードで支払えない場合がありますので注意してください。
その場合は、領収書を忘れずにもらって下さい。
これらの会計ソフトを利用すれば、確定申告の書類も簡単につくれます。
年間の利用料金は発生しますが、これも経費で落とせますので経理にかかる作業を省力化して事業に専念することができます。
クラウド会計ソフトはもはや個人事業主にとって必須とまで言ってもよいと思います。
ぜひ導入を検討してください。
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法人の場合は、日当や通勤手当を利用する節税術が存在する
法人には、個人事業主には利用できない節税術があります。
今後、個人事業主から法人化したり(法人成りともいいます)従業員を雇用する際には、必要な知識となりますので詳しく解説します。
個人事業主が自身の日当や通勤手当を出すことはできない!
日当や通勤手当は個人事業主本人には利用できませんが、従業員を雇用している場合の従業員に対する日当、通勤手当であれば経費にすることができます。
なお、日当とは、会社命令により出張した際に交通費やホテル代などの実費とは別に現金で支給される手当です。
一般的に、出張手当といわれているものです。
金額は会社毎で定められていますが、滞在先での食事代など通常の生活以上に従業員の費用がかさむことを考えて支給されるものです。
また、通勤手当は、電車・バス・新幹線などの自宅から会社まで通勤にかかる費用を原則実費で従業員に支給するものです・
それぞれ必要以上に多額に払っている場合には、税務署から目をつけられる場合がありますので、金額の程度には注意しましょう。
法人の場合は、自身を社長にして、社長として日当や通勤手当をもらえば得をする!
法人では、日当や通勤手当は従業員だけでなく社長を含めた役員でも利用できます。
役員は「役員報酬」として給与が支払われています。
この金額は課税対象のため所得税・住民税を源泉税として支払う必要がありますし、社会保険料も引かれます。
一方、日当は所得税・住民税と社会保険料がともにかからず、通勤手当には所得税と住民税がかかりません。
これらを上手く利用すれば、社長などの手取り金額を増やすだけでなく会社の経費を増やして税金を下げることができます。
例えば、役員報酬が月額40万円の35才社長が受け取る金額は、税金を差し引いて凡そ約32万9千円となります。
ここで役員報酬を32万円まで上げて、日当を5万円・通勤手当を3万円とした場合、受け取る金額が約33万4千円程になります。
役員報酬を下げたのに、受け取る金額が5千円くらい増える形になります。
しかも、日当5万円と通勤手当3万円は旅費交通費として会社の経費となりますので役員報酬として支払った場合と経費の額は一緒になります。
旅費交通費以外で、意外と盲点となる個人事業主が経費に落とせない項目とは?
事業に関連した支出は全て経費に出来ると思われがちですが、下記のものは経費では落とせません。
経費で落とせないもの
- 個人事業主自身の給料・各種生命保険料・健康保険料・年金保険料・労災保険料・医療費
- 交通違反の罰金や運転免許の更新料金
- 自宅兼事務所として利用している住宅の住宅ローンの支払い
- 節税に有効と言われているふるさと納税や iDeCo
ここで上げたものは経費とはなりませんが、ふるさと納税やiDeCOあるいは生命保険などは、確定申告で所得控除の対象となりますので、しっかりと確認しておきましょう。
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まとめ
今回は、個人事業主の旅費交通費についてまとめました。
事業に必要な旅費や交通費は、全て経費で落とせます。
経費で落とすためには、金額と事業利用の証明が必要です。
金額を確実に証明するために、領収書は必ず貰うようにしましょう。
もし領収書が無い場合でも、支出が証明出来て事業との関連を証明できれば問題ありません。
また、クレジットカードやICカード、クラウド会計ソフトを利用すれば、経理にかかる時間を短縮できて事業に専念する時間が増えますので積極的に利用するようにしましょう。
旅費交通費を経費にしっかり落として節税に役立てましょう。