個人事業主の節税

【完全保存版】少額減価償却資産の特例は節税にとって重要な制度!!利用できる要件から対象、注意点まで徹底解説

少額減価償却資産の特例がわかる

みなさんは少額減価償却資産の特例というのをご存知でしょうか。

パソコンのような10万円以上30万円未満の資産を購入した場合には、この制度を利用することで大きな節税効果が期待できます。

そこで今回は、これらの疑問について徹底解説いたします。

ポイント

  • 減価償却や少額減価償却資産の特例とはいったい何?
  • 少額減価償却資産の特例にはどのようなメリットがある?

記事の後半では少額減価償却資産の特例以外の特例について解説もしておりますので、それらを上手に使いこなして節税につなげていきましょう。

10万円以上の備品を購入した場合は、原則、減価償却費を通じて経費計上する必要がある!

通常の経理処理であれば備品などを購入した場合は「消耗品費勘定」などを用いて経理処理します。

しかしその備品の購入価格が10万円以上の場合には、原則として消耗品費勘定などの経費科目ではなく、資産科目として計上しなければなりません

資産科目で計上されたものは、購入した月から数年に分けて「減価償却費勘定」という科目で経費処理されます。

【例1】令和2年1月15日にパソコン(9万円)を購入し、代金は現金で支払った

・購入時の経理処理

借方 金 額 貸方 金 額
消耗品費 90,000 現金 90,000

 

【例2】令和2年1月15日にパソコン(12万円)を購入し、代金は現金で支払った

・購入時の経理処理

借方 金 額 貸方 金 額
工具器具備品 120,000 現金 120,000

・決算時の経理処理

借方 金 額 貸方 金 額
減価償却費 30,000 工具器具備品 30,000

上記のパソコンについては12万円を4年間で費用計上していく為、取得した年度においては3万円が今年の経費として算入されます。

なお、これは1月に購入しているため12月までの12カ月分ということで1年で3万円が経費になっていますが、7月に購入していた場合は6カ月分となるため、1.5万円になります。

パソコンについては4年間で費用計上することになっており、このように経費処理をおこなう年数は購入した備品の種類によって異なり、その年数は国税庁が定める「耐用年数表」にて確認することができます。

10万円以上の備品などについては、この耐用年数に応じて経費計上されていくことになります。

参考

国税庁HP 耐用年数表

なぜ買った時に全額費用計上したらダメなの?税務上の考え方とは?

上記では購入した備品などが10万円以上の場合は数年間に分けて費用計上すると説明しましたが、何故そのようなことをしなければならないのでしょうか。

購入した年度において一括で費用計上する方が事業者としては楽であり、なにより大きな経費となります。

しかし、この「大きな経費となる」ということが1つの問題点でもあります。

「大きな経費とすることができる」ということは、「利益調整を行いやすくなる」ということでもあります。

そのため、利益が多く出ている年度末において高額な備品を購入することにより経費が増え、最終的な税金を抑えることにつながってしまうのです。

減価償却制度はこのような「租税回避を防ぐため」ともいわれています。

減価償却ってどういう制度

固定資産は時間経過により品質の低下や性能が劣化し、結果としてその資産価値が減少していきます。

「その価値が落ちた部分を数年間で経費にしましょう」というのが減価償却の考え方です。

しかし、資産の中には時間経過により劣化しない資産もあります。

代表的な資産としては「土地」「書画」「骨董品」などが挙げられ、これらの資産は時間経過により価値が下がらないため、減価償却の対象とはなりません

このように減価償却の対象とならない資産のことを「非償却資産」といいます。

 

また、減価償却制度の目的は「費用収益配分の原則」「費用配分の原則」という会計処理上の原則が関係しています。

これらの原則を簡単に説明すると、

「その年の収入を得るためにかかった経費はその年の経費とする」

また、

その年の収入を得るためではない経費は翌年以降の経費とする

ということになります。

 

例えば、

・販売用の商品を仕入れ、購入した年度内で売れた場合

→ 「仕入勘定」として費用計上される

・仕入れた商品が翌年以降に売れた場合

→ 購入した年度では経費にならず、翌年の売れた年度において費用計上される

このように収入と経費を同一年度内で計上することで、年度内の適切な事業利益を計算することができるのです。

減価償却についても考え方は同じであり、購入した備品はその年だけの収入を得るために購入したものではなく、翌年以降の収入についても影響を及ぼします

よって耐用年数という概算年数で均等に費用計上する必要があるということになります。

 

ちなみに減価償却の制度についてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。

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30万円未満の資産を買った年に費用計上できるのが少額減価償却資産の特例!!

10万円以上の資産の場合は国税庁が定める耐用年数に応じて費用計上していかなければなりませんが、この減価償却制度にはいくつかの特例があり、その中でも有名なものが「少額減価償却資産の特例」です。

少額減価償却資産とは「30万円未満の資産」のことをいい、少額減価償却資産は購入した年度において一括して費用計上することが可能です。

そのため、購入した資産の1つあたりの金額が30万円未満であれば、購入した年度に一括で経費として費用計上することができ、節税につなげることができます。

少額減価償却資産の特例を使える要件に注意!!

少額減価償却資産の特例は非常に高い節税効果を得ることができますが、誰でも使える訳ではなく、一定の要件を満たしておかなければなりません。

一定の要件とは、下記です。

特例の要件

  • 青色申告書を提出している中小事業者
  • 事業所得・不動産所得・山林所得を得るために必要な資産であること
  • 取得価格が30万円未満であること

これらの要件を満たした上で、確定申告を行う際に提出する青色申告決算書の中にある減価償却費の計算明細に一定の記載等を行わなければなりません。

必要な記載

  • 少額減価償却資産の合計額を記載
  • 対象となる少額減価償却資産の備考欄に「租税特別措置法第28条の2を適用」と記載する
  • 少額減価償却資産の明細を保管している

また、年間の少額減価償却資産の合計額が300万円を超える場合には、超えた部分に係る資産については少額減価償却資産の特例から除外されますので注意が必要です。

税制改正により期間が延長!令和2年以降は、従業員500人以下という要件に引き上げ?!

少額減価償却資産の特例については期限が設けられており、現在では令和4年3月31日までに取得した資産に限り適用されることになっています。

この適用期限については期限が迫ると、その都度期限が延長されていますので、令和4年3月31日以降においても期間の延長が行われる可能性が高いといえます。

また、上記で紹介した適用要件の1つに「青色申告書を提出している中小事業者」とありますが、ここでいう中小事業者の判定は、常時雇用する従業員の人数によって行われます。

令和2年3月31日までにおいては従業員の人数は1,000人以下が条件でしたが、令和2年4月1日以降においては500人以下に引き下げられています。

税抜経理と税込経理で判定が変わるので注意

会計処理には税込金額で経理処理する「税込経理」と税抜金額で経理処理する「税抜経理」の2つがあることはみなさんご存知でしょうか。

この2つは消費税を計算する上で非常に重要なポイントになるのですが、減価償却の処理においても非常に重要なポイントになります。

少額減価償却資産の特例が使えるかどうかは取得した資産の金額によって左右されるため、経理処理によってどのような影響があるのかを理解しておく必要があります。

ここでは税抜経理と税込経理でどのような違いがあるのかを解説します。

(例1) パソコンを320,000円(内消費税:29,091円)で購入した

税抜経理を採用している場合のパソコンの取得価格は290,909円となるため、少額減価償却資産の特例により一括で費用計上することができます。

それに対し、税込経理を採用している場合のパソコンの取得価格は320,000円となるため、少額減価償却資産の特例は適用することができません。

このように取得価格の30万円の判定や、年間の少額減価償却資産の限度額である300万円の判定などにおいては、税抜処理の方が有利になるということは一目瞭然です。

そのため、税抜経理を採用した方が良いといえますが、消費税の納税義務がない免税事業者は強制的に税込経理となるため、税抜経理を選択することはできません。

少額減価償却資産の特例は中小企業者などの法人も使える!国税庁はなんでこんな制度を作った?

減価償却の原則は「10万円以上の資産は耐用年数に応じて費用計上すること」です。

しかし、小規模事業者が10万円の資産をすべて耐用年数に応じて費用計上することは、資産管理を行う上で非常に手間がかかってしまいます。

そのため、その手間を考慮して少額減価償却資産の特例が創設されたといわれています。

また少額償却資産の特例は個人事業主だけではなく、一定の要件を満たした法人も使うことができるため、法人、個人問わず使うことのできる特例となっています。

一括償却資産との使い分けも重要

上記の少額減価償却資産の特例以外にも、10万円以上の資産を短期間で費用計上する方法として、「一括償却資産の特例」というものがあります。

この2つの特例をそれぞれ上手く活用することで高い節税効果を得ることができます。

2つの特例の違いをよく理解し上手に活用していきましょう。

一括償却資産とはどういうもの?

少額減価償却資産は30万円未満の資産であったのに対し、一括償却資産は取得価格が20万円未満の資産のことをいいます。

一括償却資産はその資産の種類に関係なく3年間で均等に費用計上することができることが一番の特徴です。

その他の特徴とともにまとめておきます。

少額減価償却資産の特徴

  • 3年間で均等に費用計上できる
  • 一括償却資産は個別に計上せずに1つの資産として取り扱うため、個別管理を行う必要がない
  • 一括償却資産に計上した資産の1つを除却した場合に「除却損」を計上できない

ということが挙げられます。

一括償却資産は通常の資産管理とは異なり、20万円未満の資産を「一括償却資産」という項目にまとめることになるので個別管理を行いません。

また、一括償却資産に計上している一部の資産を処分した場合でも個別に除却損として費用計上することができず、あくまでも減価償却費として3年間で均等に費用計上していくことになります。

実は、「均等に」というのがポイントになってくるのがこの一括償却資産です。

例えばバイクは耐用年数3年と規定されていますが、個人事業主が新品のバイクを12月に18万円で購入したとしましょう。

その場合、通常の減価償却と一括償却資産では下記のような違いがでます。

一括償却資産 通常の減価償却
1年目の費用計上額 6万円 0.5万円
2年目の費用計上額 6万円 6万円
3年目の費用計上額 6万円 6万円
4年目の費用計上額 5.5万円

特徴的なのは12月が決算月の個人事業主にとって、1年目は1月分しかないため、通常の減価償却は1か月分の0.5万円しか計上できませんが、一括償却資産は何月に買おうが3分の1を1年目に計上できるのです。

少額減価償却資産、一括償却資産の使い分けはどうするのが正解?

少額減価償却資産と一括償却資産については「どちらをどのように使ってよいのかわからない」と思われる方が多いのではないでしょうか。

通常の減価償却と少額減価償却資産、そして一括償却資産の内容についてまとめると次のようになります。

通常の減価償却 少額減価償却資産 一括償却資産
10万円以上20万円未満の資産 耐用年数により費用計上 取得年で全額費用計上 3年間で均等計上
20万円以上30万円未満の資産 耐用年数により費用計上 取得年で全額費用計上 適用不可
30万円以上の資産 耐用年数により費用計上 適用不可 適用不可

取得した資産の金額を上記の表に当てはめると、3つの制度のうち、どの制度が早期に費用計上できるのかがよくわかるかと思います。

少額減価償却資産が一番早く費用計上することができるため、経費を多く計上したい場合は、少額減価償却資産の特例を優先的に使うことをおすすめします。

少額減価償却資産の年間合計額が300万円を超えると少額減価償却資産の特例を使うことができなくなりますが、一括償却資産の特例は使うことができるので、一括償却資産も積極的に使うことで節税につなげることができます。

 

10万円以上20万円未満の資産を購入した場合において、最大限の費用を計上するための流れをまとめると、

少額減価償却資産の特例を使う

購入資産の耐用年数が3年未満であれば(通常の減価償却)

そうでなければ(一括償却資産)

ということになります。

また中古資産を購入した場合には法定耐用年数よりも耐用年数が短くなるため、注意が必要です。

まとめ

減価償却は事業を始めたばかりの人などには、あまり馴染みのない言葉であり特殊な制度ですが、事業を行っていく上では必ず理解しておく必要があります。

特に少額減価償却資産の特例や一括償却資産の特例については節税対策として非常に大きな力を発揮します。

通常の減価償却だけではなく、少額減価償却資産の特例や一括償却資産の特例についての特徴を正しく理解することで、円滑な事業経営や節税につなげていくことができます。

  • この記事を書いた人
篠 昌義(公認会計士/税理士)

篠 昌義(公認会計士/税理士)

有限責任監査法人トーマツ(デロイトトーマツグループ)で大企業から中小企業までの監査やコンサルティング、税理士法人平成会計社(現税理士法人令和会計社)で大企業の法人税から個人の所得税まで幅広く実務を担当したのち、自身も経営者としてシェアリングテクノロジー株式会社(東マ:3989)の取締役CFOから代表取締役まで幅広く経験。シェアリングテクノロジー株式会社では東証マザーズ上場の責任者を務めるだけでなく、事業推進、資金調達、M&A、組織改革などを幅広く遂行。 詳しい経歴・プロフィールは当メディアの運営者情報をご覧ください。

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