フリーランスの方などは自宅兼事務所で仕事をしているなんてことも多いのではないでしょうか。
実は、自宅兼事務所の家賃、水道光熱費などのうち事業で使っている比率分は経費として計上することができます。これを家事按分といいます。
今回は、家事按分の割合算出方法から仕訳までを事例などを交えて徹底解説いたします。
目次
- 1 フリーランスなどの個人事業主が家事按分するときの比率の決め方、基準は?
- 2 自宅兼事務所の家賃は面積割がおすすめ
- 3 自宅兼事務所が持ち家の場合、住宅ローンの元本返済は家事按分の対象とはならない
- 4 水道光熱費、インターネットなどの通信費は、使用日数、時間などを目安に按分
- 5 自動車の減価償却費、ガソリン代、保険料などは、走行距離分を経費にできる
- 6 家事按分が認められる勘定科目の範囲や金額の上限はあるの?
- 7 青色申告と白色申告で家事按分できる比率が異なる!
- 8 「freee」、「マネーフォワード」、「やよいの青色申告オンライン」などの会計ソフトを利用すれば、使い方、入力方法などを理解するだけで、スムーズに家事按分できる
- 9 家事按分に関して、確定申告に必要な書類は? 税務署がみるポイントは?
- 10 家事按分をしっかり理解して、余分な税金の支払いを減らそう
フリーランスなどの個人事業主が家事按分するときの比率の決め方、基準は?
家事按分において、事業用とプライベート用の比率を決める方法や基準は法律などで定められているわけではありません。
したがって、比率の決め方は、事業用に利用している割合であると客観的に説明できればどんな手法であっても問題ありませんし、月ごとに比率を変更することもかまいません。
ただし、一般的に利用されている割合の算出方法を使った方が、税務署の納得も得られやすいと考えられるため、独自の算出方法を利用することはおすすめしません。
一般的な算出方法を理解して、ご自身の家事按分の算出に役立ててみてください。
自宅兼事務所の家賃は面積割がおすすめ
フリーランスの方は、自宅兼事務所で作業をしている方も多いのではないでしょうか?
自宅兼事務所の家賃に関しては、事業で利用している場所の面積割合を経費とするのが一般的です。
例えば、面積割合はこんな風に考えます。
面積割合で家賃を家事按分
- 家賃が20万円、自宅兼事務所の総面積が50平米
- 事業で利用している書斎の面積10平米
- 家賃20万円×書斎10平米÷総面積50平米=4万円を地代家賃として経費計上
また、このケースにおける仕訳は以下のようになります。
ポイント
地代家賃 4万円 / 現金預金 20万円
事業主貸 16万円
ここの「事業主貸」とは、事業に関係ない支出をした際に処理する勘定科目となっています。
個人事業主にとっては必要不可欠な勘定科目であるためしっかりと理解しておきましょう。
自宅兼事務所が持ち家の場合、住宅ローンの元本返済は家事按分の対象とはならない
自宅兼事務所が持ち家で、住宅ローンを組んでいる場合、その元本返済分をまるまる家事按分の対象とすることはできません。
ただし、自宅兼事務所の建物部分については、減価償却費として、年に一定額ずつを経費計上することができますので、この減価償却費については、家事按分することができます。
また、住宅ローンの金利部分については、家事按分の対象とすることができます。
利息に関してはそもそも利子割引料として費用となるものであるため、その費用のうち事業に関連する部分を家事按分の対象とすることができるというわけです。
さらに、火災保険料、固定資産税なども家事按分の対象とすることができますので、金利とあわせて覚えておきましょう。
住宅ローンで家事按分できるもの
- 建物部分の減価償却費
- 住宅ローンの利息
- 火災保険料
- 固定資産税
家賃の家事按分についてより詳しく解説した記事がありますので、こちらの記事もあわせてお読みください。
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水道光熱費、インターネットなどの通信費は、使用日数、時間などを目安に按分
自宅兼事務所の水道光熱費、インターネットの通信費は、使用日数や使用時間で家事按分するのが一般的です。
例えば、水道光熱費や通信費の家事按分はこのように考えます。
使用時間で光熱費を家事按分
平日の9時から17時まで仕事している場合
8時間×5日=40時間を事業用
1週間の合計時間である24時間×7日=168時間
40時間÷168時間の約25%を経費とする
また、携帯電話の通信費については、事業用の携帯電話を用意することがおすすめです。
ただし、事業用とプライベート用、共用の携帯電話を使っている場合は、こちらも使用時間などの合理的な割合で家事按分をすることになります。
なお、ガス代については、ガスが事業用に使われない業種の場合、家事按分の対象とはならないため、注意してください。
さらに、電気代については、使用しているコンセントの数で按分している方もいます。
自動車の減価償却費、ガソリン代、保険料などは、走行距離分を経費にできる
自動車についても、十分なお金があるのであれば、事業用とプライベート用を別々に保有することをおすすめします。
しかし自動車は比較的高額なため、事業とプライベート両用で使用している方も多いことでしょう。
その場合には、自動車の減価償却費、ガソリン代、保険料、固定資産税などは、家事按分の対象にすることができます。
一般的には、走行距離、利用日数、時間などを基準に按分するのが一般的です。
家事按分が認められる勘定科目の範囲や金額の上限はあるの?
前述の費用以外にも、例えば、備品、飲食代、図書関連費なども家事按分の対象とするケースがあります。
家事按分が認められる勘定科目が限定されているわけではありませんし、金額の上限もありません。
しかし、一般的に家事按分が認められている勘定科目以外で家事按分を行うことは、税務署に目をつけられやすいため、税理士に相談するなど慎重に対応するほうがよいでしょう。
青色申告と白色申告で家事按分できる比率が異なる!
青色申告では、事業に利用している割合が少なかったとしても、合理的な割合であれば、その割合分を家事按分の対象とし、経費とすることができます。
一方で、白色申告の場合、事業に利用している割合が50%超でなければ、家事按分の対象とすることができません。
したがって、家事按分の範囲は、青色申告の方が広くなるため、特に理由がなければ青色申告を選択することをおすすめします。
「freee」、「マネーフォワード」、「やよいの青色申告オンライン」などの会計ソフトを利用すれば、使い方、入力方法などを理解するだけで、スムーズに家事按分できる
最近では、「freee」、「マネーフォワード」、「やよいの青色申告オンライン」のように個人事業主用の会計ソフトなども安価に提供されています。
これらの会計ソフトでは家事按分機能がついており、家事按分の知識がそこまでなくても、登録することで自動で家事按分してくれるため、非常に便利です。
たとえば上図のマネーフォーワードでは一年間の水道光熱費や通信費を、パーセンテージを設定するだけで一括で家事按分できます。
家事按分に関して、確定申告に必要な書類は? 税務署がみるポイントは?
家事按分に関して、按分割合の算出根拠資料などの資料を確定申告の時に提出する必要はありません。
ただし、税務署が来た場合、家事按分の算出根拠を見られる場合があるため、以下のような資料はしっかり保管しておきましょう。
保管しておく資料
- 自宅兼事務所の間取り図
- 作業時間の記録、履歴
また、税務署は、家事按分している経費に対して、以下のポイントを確認します。
ポイント
- 業務に直接関連すること
- 業務遂行上必要であること
- 業務用の金額を明確に区別できること
- 家事按分に比率にある程度の継続性があること
例えば、家族が従業員となっていて、従業員で仕事の面談も兼ねた慰安旅行に行った場合、業務遂行上必要でなかったと判断され、家事按分していたとしても、税務署には認められないといったケースがあるということです。
また、家事按分の割合算出ルールをコロコロ変えることも、脱税行為とみなされる場合がありますので、原則としてルールは一度決めたら変更しないようにしましょう。
家事按分をしっかり理解して、余分な税金の支払いを減らそう
家事按分にはルールがないため、ご自身にあった合理的かつ客観的な方法で家事按分の割合を算出することが重要になります。
家事按分を理解することで、経費をしっかりと計上し、節税に役立てましょう。
家事按分のほかにも個人事業主の経費について詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてご一読ください。
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